僕は、京都生まれの京都育ちです。
生まれは、平安神宮のほど近く、「岡崎」というところで生を受け、4歳の時に、松ヶ崎に引っ越してきました。
この「松ヶ崎(まつがさき)」というのは、京都市左京区にある地域で、その昔、紫式部の「源氏物語」にも名前が出てくるほどの古い地名です。
平安京の時代は「松ヶ崎村」と呼ばれていました。
司馬遼太郎の「龍馬が行く」にも、龍馬が隠遁する「岩倉具視」に会いに岩倉に向かう途中、「松ヶ崎村を通って」と、その記述があります。
北には、五山の送り火(大文字焼きとしても有名ですね)の内の2つである「妙」「法」の山に抱かれ、名刹と呼べるかはわかりませんが、京都七福神の一つである「松ヶ崎大黒天」があります。
北山通りのすぐ近くに妙法の山々があるので、ものすごく大きな送り火を見ることができます。たいまつの火の大きさがわかるくらい、くっきりと。
なので、送り火の日は大勢の人でごった返します。
ちなみに、この五山の送り火で燃やした松明の炭は、もらうことができます。
登って勝手に拾ってもOKです。
名物はなんといっても、松ヶ崎発祥と言われる「菜の花漬け」でしょう。
その昔、田を休ませる間、菜の花を植えていたのですが、それを漬け物にしようと、あるお婆さんが始めたのがキッカケだそうな。
独特の風味がフンっと匂いますが、慣れればこれがまた旨いこと。
白米がすすみます。
ここははずせないのが、京都工芸繊維大学です。
松ヶ崎の大部分を占める国立大学で、学長はノーベル化学賞を受賞した福井謙一さんも務めておられました。
秋になると学園祭が行われて、小学生の頃、この学園祭は何よりの楽しみでした。
名物店は、ワンダーフォーゲル部の「イナゴナルド」(まだあるのかな?)
イナゴの佃煮は衝撃的でした。
近くには、高野川(たかのがわ)が静かに流れます。
この川は、出町で加茂川と合流し、鴨川として市内を縦断します。
僕が小学生の頃は、鮎がいたくらいきれいな川だったのですが、上流の工事などで水流が激減。
川のあちこちで中州ができたのですが、逆にこれ幸いと、今では鴨や鷺が生息しています。
春にはこの川沿い一面に桜が咲き誇り、それはそれは美しい川となります。
桜が散れば、続いてツツジが咲き、人々を楽しませてくれます。
冬には、京都の冬の風物詩である、渡り鳥の「ユリカモメ」が飛来して、冬をこの川で越します。
しかし、地球温暖化のあおりを受けて、最近ではめっきり数が減ったそうです。
京都にはその昔、琵琶湖から水を引いた「疎水(そすい)」というものがあります。
この疎水は松ヶ崎を横断して流れているのですが、
春は桜が咲き誇り、夏は蛍が飛び交う、清流となっています。
桜も蛍も、地元の人しか知らない絶景ポイントなので、観光客の方たちはいません。
やはりなんといっても、住環境は素晴らしいです。
静かだし、近くに山はあるし、緑はあるし、川はあるし。
京都らしく、適度に田舎で適度に都会というのは、暮らし良いですね。
そんな大好きな松ヶ崎とも、もうすぐお別れです。